グッドジョブ本人

いいものや面白いものがたくさんあふれていたよってことやんわりと残しておく

西野カナの誠実

 


西野カナが休止を発表した。その活休前ラスト公演の横浜アリーナ3days最終日。ライブビューイングでそれを見届け、いま万感の想いでいる。


横浜アリーナを横一線に貫く花道、そしてセンターステージ。円形ステージに上からプロジェクションマッピングでターンテーブルの映像を当てて開演時間前を演出し、それを迎えたら両サイドから総勢20名以上のマーチングバンドが登場。LDHみたいだなあと想いながらバンド隊がひとしきり演奏をしたあとで中央にスポーンと飛び出た西野カナ、歌うは「しょーもないことも どんなことでも全部伝えたい」「隣で私が絶対笑わせてあげるんだから」と「君」に寄り添う歌「HAPPY HAPPY」。


西野カナのパッと開放的な朗々さ、それに味方した大所帯バンドのにぎやかな音、そんなステージを心待ちにしたファンの大歓声。彼女が円形ステージからぐるり反対側を向けば、その方角のペンライトの光は大きく波打ってはしゃぐ。ライブビューイングの会場である映画館にもペンラがあちこちにあり、彼女のパフォーマンスに喜んでいた。


こんなにも素直な発し手と受け手の関係、とてもうらやましく美しい。気づくと「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で母親が息子を守るシーン(詳細は忘れた)を観たときのごとく感極まっていた。なんてことない「ようこそ!」のシーンだったろうに、なんだかとても震えてしまった。


コンサートを観るのはこれで3回目だ。最初は離婚して襲ってきた孤独の反動みたいな感じで足を運び、2回目は初の東京ドームを彼女がどんなふうに演りきるのかが見たくて、今回は活動休止前の有終の美に期待して。いずれも当事者性不十分のままに観に来てるわけだが、毎回そのクオリティが上がっていることも実感して、今回はことさらいい光景に立ち会えた気持ちになった。


今回も歌いながら、客席に手を振ったりピースしたりのファンサ尽くし。曲が終われば気取らない松阪弁のありがとう(語尾上げ)MC。海外ライビュ先の香港と台湾のファンに向けた現地語の挨拶は2年前より確実にスラスラと話せているところも成長のひとつだと思った。


そんなもてなしに「さすがや」と思う一方で、今回はすごくパフォーマンスに集中させたセットだった。EDMやトロピカルハウス要素をトラックにあしらったダンスナンバーをメドレーで入れ、お色直しを挟んでからのアンプラグドセットではエド・シーランをカバーしてからの「会いたくて 会いたくて」アコースティックアレンジ。ドームで話題になった二桁回の着替えとか恒例のSNSコメント読み上げは行わず、懐かし曲を10曲近くもメドレーで歌い上げる……西野カナ、こんな貪欲にパフォーマンスするのか!とびっくりした。


アンコールではキャリア10年目にして初めて対象を母親に向け「いつか私もママみたいに愛に溢れた人になりたい」と話す「Mama」を歌った西野カナ。最後の最後に歌ったのは、西野家がアンコールをせがむべく客席から合唱することでおなじみのナンバー「Best Friend」という。とても誠実なパフォーマンスを観た。

f:id:biftech:20190204011014j:plain