グッドジョブ本人

いいものや面白いものがたくさんあふれていたよってことやんわりと残しておく

文学フリマ東京出店、36歳にして初めて人前に立つ記

以前、尊敬するマンのひとりが「あまりしてこなかったけど、おれも出ていけるようにならんとな」とテレビ出演のオファーを受けた。対人スキルが高く、年齢もいくつか上の彼なのに新しいことを自らやるなんてすげーなーと思った。おれはやらんけど、とも思った。

それから数年経って、今日はすこし彼と同じ気持ちだったかもしれない。

自分はもう36歳である。幸いにもいろんなことに恵まれた今に着地したが、相変わらず「いつか」は口ぐせのままだった。そうしてきたことで行くはずのイベントのハイライトを見逃し、楽しみにしてたはずの店が閉店し、会える人に会えなくなった。会えなくなった人のことは今でも「もしあのとき」と考える。風呂とか帰り道とかで発作的に自分が許せなくなってめちゃくちゃ手をつねったりする。

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塩漬けの下書きの束、みたいなものを20年以上続け、いい加減嫌になった。まとまった形にしたものを作り、ブースに立った。売ったのは夫視点のマタニティエッセイ。初めて売った人は覚えてる。2人目も覚えてる。とても緊張したのバレてないといいのだけれど。それから、30人位まではメモを取っていたけれど話し込んでいたらその後ろに人が、というのが続いて止めてしまった。でも話したことはだいたい覚えてる。

いろんな発見があった。Twitter見てます、という声かけ事案。「そこにいるのは人だった!」という不思議な感覚というか、おれは君のこと何も知らないのに、わざわざ流通センターまで来てくれるんだな?!というありがたい驚きがすごかった。はるばる来てくれた友人も同様。今あらためてしみじみうれしくなっている。本当にありがとうございました。大げさでもなんでもなく、この日来てくれた人たちのこと、今後の自分の励みになります。

中でも自分の作品を手にとって「自分もいま同じようにパートナーがいて、妊娠していて、こういう内容の本は心強い」と話してくれた男性が何人かいてくれたことは、性別で色がつくのを避けるために隠してきたインターネットのプロフィールを暴いてまでやった意味を感じられる、うれしい時間だった。おれの9ヶ月ぜんぶあげるからうまいことやるといいね!という切実な願いの中にいる。

これまではフリーライターとか美大生のでる単「おれいつか***やろうと思うんスよ」を言い続けてきた。「今はまだその時期じゃない」も続けて言った。下書きが溜まった。後悔もストレスも溜まる一方だった。そういう気持ちの限界と、家庭のタイムリミットが来たところに、わずかな出店料を払うことで抜け出す場をくれた文学フリマの敷居の低さすごい。36にしてようやく、とかそういうことも実はみじんも感じなかった。いつでもチャレンジできそうな場として、とてもおおらかな場所だぜ文フリ。

今、社員一同すぐやる課みたいなちょっとおもしろい会社で働いていて、そこに影響されたかもしれない。妻が最終的にすべて話してくれる人だから、そのよさもうまく働いたかもしれない。今日はそういういろいろと、積み積みの後悔がようやく立たせてくれた機会だった。

ためこむよりも出してみる、そうすることでクリアに先が生まれる。それがわかったので、これからはどんどん前に出てみたい。痛い目にも遭いながら、残りの時間でかなり研ぎたいと思う。そしてこれからはこういうことにいちいち喜んでいく。

来場者3600人の約2%にリーチした今回の上がりは約3000円。印刷代を聞く前に値付けはやめようという大反省を残しはしたが、初手にして得たものはかなり大きかった。今日は今日のことをやれました。